「指導しても何度も同じミスを繰り返す社員がいるんです」「労災を引き起こさないか心配です」といった声を、企業の担当者様からよく聞きます。「ミス」に対処するためには、まず「人はどのように情報を処理して仕事をしているのか」を知ることが重要です。情報処理の流れを理解できれば、それがうまくいかない原因も想定でき、具体的な対処法が見えてくるからです。人はどのように情報を処理しているのか人の情報処理の流れは、皆さんが日常的に使っているパソコンの仕組みとよく似ています。パソコンの場合はキーボードを経由して情報を入力し、CPUで処理し、出力しています。一方、人の場合は、目や耳を通じて情報を入力し、頭で処理し、手や目を使って作業として出力しています。この情報処理の流れのどこかに問題があると、仕事上の問題が生じやすくなります。よく見られる原因① 情報の入力方法が合っていない実務の現場でよく見られるのは、その人が苦手な入力経路を使って情報を与えてしまい、頭で情報が処理(理解)される以前に、そもそも情報が頭に入力できていないようなケースです。【例】・視覚情報の取得が苦手な人に、資料だけで説明する・聴覚情報の取得が苦手な人に、口頭だけで指示する「苦手な入力経路を鍛えて上手にする」という方法もありますが、あまりおすすめしません。生来、走るのが遅い人を鍛えて早く走れるようにすることが難しいのと同じで、効率が悪いからです。得意な経路を通じて情報を入力するほうが圧倒的に効率的です。実務の現場で多いのは、「口頭だけで説明しても理解してもらえなかった」ようなケースではないでしょうか。そのような場合は、視覚情報も添えて説明すると伝わりやすくなるかもしれません。お試しください。よく見られる原因② 情報量が許容量を超えている人には情報を一時的に保持する能力(いわば「頭の中の作業台」)がありますが、この能力には個人差がかなりあります。その人の「頭の中の作業台」の容量を超える情報を一度に与えると、作業台から情報がこぼれ落ち、取りこぼしが発生します。一度に与える情報が多くなりすぎていないか、意識しながら指導することが重要です。よく見られる原因③ マルチタスクの負担人には、・シングルタスクを得意とする人・マルチタスクを得意とする人がいます。マルチタスクが苦手な人にマルチタスクを課す(同時進行の業務を多く与える)と、作業の抜けやミスが起こりやすくなります。人によっては、聞きながらメモをとること自体が負担(マルチタスク)になる場合もあります。何気なくさせている業務が、その人にとってマルチタスクになっていないか、意識しながら指導することも大切です。対応の基本的な考え方重要なのは、管理者が「なぜ、この人はうまくできないのだろうか」という視点で状況を捉えることです。探偵のように手がかりを集めながら原因を整理し、トライアンドエラーで対応を調整していく姿勢が大切です。まとめると対応の基本は次の3つです。得意な経路を利用して情報を処理できるようにする情報量の負担を軽減するマルチタスクを回避する具体的には次のような対策が考えられます。口頭説明だけでなく、メモや手順書を渡す(得意な経路を利用)視覚情報と聴覚情報を組み合わせて伝える(複数の経路を利用)情報はできる限り簡潔に伝える(情報量の負担を軽減)同時進行のタスク数を減らす(マルチタスクを回避)メモが苦手な人には初めからメモや手順書を渡す(マルチタスクを回避)ミスを繰り返す社員を相手にするとき、どれだけ丁寧に指導しても「本当にわかってくれているのか」心配になるものです。そのような時は、「指示を復唱」させて、本当に理解しているか最終チェックするという方法もあります。作業手順の工夫は昔から行われているミスを起こしにくい作業手順や仕組みを作るための工夫は、昔から多くの企業で数多く取り入れられてきました。このような工夫により、作業者の認知負荷を減らし、多少の能力差があっても作業が成立しやすくなります。結果として、皆が働きやすい環境づくりにもつながります。産業医への相談が有効なケースミスが多い社員の背景要因として、単なる認知負荷の問題ではなく、健康に課題がある場合もあります。例えば、睡眠不足やメンタル不調治療を要する慢性疾患などが影響していることもあります。指導の工夫だけでは改善が難しい場合には、産業医が面談を行い、健康上の問題がないかを確認することで、対応の方向性が見えてくることもあります。「指導しても改善しない」「安全面が心配」と感じたときには、産業保健職への相談をご検討ください。関連記事ミスを繰り返す背景には、さまざまな要因があります。例えば、指示の聞き取りにくさやコミュニケーションの特性が関係している場合もあります。以下のコラムもあわせてご参照ください。▶ コラム「労務管理|聞き間違いが多い社員への対応」▶ コラム 「労務管理|コミュニケーションに課題のある社員への対応」▶ 業務内容はこちら▶ お問い合わせはこちら